ある飛行機の生涯
第2章 ぼくのあの日とその後
ある日、アメリカのボストンの国際空港で、あの倉庫でいっしょ
だった彼女と再会することができた。彼女もぼくのように塗装で見
た目が変わっており、声を聞くまで気づかなかった。
「元気?」
彼女はうれしそうな口調でそう聞いてきた。可愛い口調は変わって
いなかった。(飛行機だから当たり前だが)
「うん、元気だよ。君も?」
ぼくは気持ちを落ち着かせながら言った。
「もちろん!!!」
彼女の出発時刻まで、ぼくたちはいろいろな話をした。とても幸
せな気分だった。
「それじゃあ、出発の時間だから行くね。またどこかで会おうね!」
「うん。……あのさ」
ぼくは彼女に自分の思いを伝えようとしていた。
「何?」
彼女はきょとんとして聞いてきた。
「……いや、なんでもない。またね」
「変なの。それじゃあね」
そして、ぼくは彼女を見送った。彼女の姿を見たのはそれが最後
だった……。
ぼくは、出発の時間まで寝ることにした。これから日本に帰るの
だから、休んでおかなければならない。
それから何時間かして、ぼくも空に飛び立った。離陸した直後、
どこかからか、
「大好きだよ」
という声が聞こえてきた。激しい雑音にまぎれての声だったので、
通信トラブルか何かだと思ったが、ぼくはとてつもない胸騒ぎがし
た……。
離陸が終わって、機体が水平になった途端、ぼくはいつもの無線
につなげた。いつものように、長い旅の暇潰しで、他の飛行機と会
話をするのだ。
しかし、そのとき、飛行機たちは大混乱に陥っていた……。