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ある飛行機の生涯

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 彼女の他の飛行機もどんどん「就職」していった。そんな中、今
度はぼくが引き取られることになった。どこに「就職」するのかを
知り、ぼくは驚いた。

 それは日本の『日本航空』という大手航空会社だった。同期の飛
行機で、日本の航空会社に「就職」するというのはぼくが初めてだっ
た。このことは、倉庫中の飛行機の間で話題となり、
「日本人はみんな『ちょんまげ』をしてる!」
「いや、出っ歯にメガネだよ!」
「カミカゼに使われるかもよ!」
口々に(飛行機に口は無いけど)そう言ってきた。ぼくは少し不安
になった……。

 数日後、ぼくは別の場所で塗装された後、日本に向かった。もち
ろん自力でね。一応、これはぼくの初飛行となったわけだ。



 何の問題も無く、日本の『成田空港』という空港に着いた。そし
て、ぼくはその空港にある航空会社の倉庫に置かれた。
 そこには、ぼくと同じ『ボーイング』の先輩の飛行機さんがいた。
ぼくと同じ『B747』のジャンボジェット機だった。
「コ、コニチワ!!!」
ぼくは下手な日本語で挨拶した。すると、その先輩の飛行機さんは、
「HAHAHA」と笑い出した。そして英語で、
「英語でいいよ」
彼は笑いながらそう言った。ぼくと年が離れた感じの男だ。
「日本での暮らしはどうですか?」
ぼくは先輩に思わずありきたりの質問をした。先輩はすぐに、
「最高さ!!! 中の人(パイロットさんやスチュワーデスさんた
 ちのことさ。)はイイ奴ばかりだし、整備もしっかり行き届い
 ているし! もちろん、客もまだマナーがイイ奴ばかりだし!」
その言葉にぼくはほっとした。しかし、先輩は悲しそうに話を続け
る。
「だけど、厳しくてな……。 この間、空を飛んでいたときに
 『ANA』っていうよその航空会社の飛行機にかわいい女の子が
 いたんで、ちょっと挨拶しようと少し近づいてみたんだ……。そ
 したら、「『ニアミス』だ!!!」って大騒ぎしやがった!!!」
ぼくと先輩は笑った。ただ、ぼくは心のどこかで、あの女の子のこ
とを思い出していた。この世界のどこかの空港か空で会いたいと…
…。



 1ヵ月後、ぼくは初めてお客さんを乗せて飛ぶことになった。飛
ぶのは国内線で『東京〜名古屋』だ。夕方から夜にかけてのフライ
トだった。これは試験飛行も兼ねているらしい。
 ぼくを担当する初老のパイロットさんは、ぼくの体(機体)をす
みずみまで見てまわっていた。そして、一通り見終わった後、「が
んばってくれよ!」ぼくの体(機体)をなでてくれた。ぼくは少し
うれしかった。これからぼくの人生が本格的に始まるのだと感じた。

作品名:ある飛行機の生涯 作家名:やまさん