ある飛行機の生涯
第1章 ぼくは生まれた
ぼくは、西暦2000年に飛行機としてこの世に誕生した。4つのジェットエンジンを持つファーストクラス付きのジャンボジェット機の『B−747』としてだ。
ぼくが生まれたのは、アメリカの『ボーイング』っていう大きな会社の工場だ。そこにはたくさんの人間が汗水流して働いていた。
生まれて少しすると、巨大な倉庫に移動した。倉庫には、ぼくの他にもたくさんの飛行機の仲間がそこにいた。ぼくのすぐ右には、8個もジェットエンジンがある巨大なジェット機さんがいた。このジェット機さんは『B−52』という軍用機で、かなり強そうな男だった……。そして、左には、2個のジェットエンジンを持つ、ぼくよりは小さいジェット機さんの『B−767』がいた。このジェット機さんは可愛い女の子で、(飛行機仲間で)とても人気があり、となりの倉庫からのぞきこむ飛行機もいるほどだったんだ!(人間にはわからないけど、ぼくたち飛行機にも「意志」や「性別」とかがあるよ)彼女のすぐとなりにいれたことは幸せだった。
ぼくは彼女のことが好きだったんだ。ちなみに会話は秘密の周波数の無線で、人間にバレないようにしていた。
ぼくはそこで、充実した日々を仲間と送っていた。
1ヵ月が過ぎたころ、工場にスーツを着た偉そうな人間たちが、ぼくたち飛行機を見に来るようになった。いきなりジェットエンジンを吹かして驚かしてやろうかと思ったが、『飛行機墓場』でギロチンにかけられるということを思い出したのでやめた……。
そんな中、ぼくの右にいたあの巨大な軍用機のジェット機さんが、アメリカ空軍に「就職」していった。元々決まっていたことだったらしく、そのジェット機さんはそれほど驚いている様子じゃなかったけど、やっぱり、別れをつらそうにしていたよ……。(人間が話していることは、無線やマイクを通じて聞こえてるんだ)
そのジェット機さんが去ってすぐ、今度は左にいたあの女の子のジェット機さんがアメリカの『ユナイテッド航空』という大手航空会社に「就職」することになった。倉庫から去る前夜、倉庫の飛行機のみんなは、無線でお別れを言った……。
そして、ぼくたちは眠った。(主電源を切るのだ)
「ねぇ、お隣りのジャンボジェット機さん」
主電源を切った後、女の子のジェット機さんが無線でこっそり話しかけてきたんだ。ぼくは待機電源でそのジェット機さんと無線通信を始めて、
「何?」
ぼくはドキドキしながら聞いた。
「……私、あなたのこと好き……」
いきなりそう言われた……。もちろんぼくは、電子機器がショートするかと思うほどビックリした!
「☆∀φ〒@♪ω¥◎ξ!!!」
コンピューターのCPUに負荷がかかって混乱しているぼくを気にせず、彼女は話を続ける。
「人間に生まれてたら、もっと長い時間をいっしょに過ごせたのに……」
「ぼ、ぼくも……」
「あっ、ごめんね。もう寝る時間なのに」
「君のことが好きだ!!!」
ぼくはそう言い切った。だが、彼女はすでに無線を切ってしまっていたようだった……。
ぼくはがっかりして、寝ることにした……。
次の日の朝早く、彼女は引き取られていった。ぼくは自分の思いを彼女に伝えることはできなかったよ……。