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7月の夜、公園にて。

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「夜の空を意識して見た」
 七夕。もうそんな季節。クラスの人達に悪口を言われるようになってから約2ヶ月が経った。嫌がらせをさせるようになってから約1ヶ月が経った。暴力を受けるようになってから約1週間が経った。
 その間自分は何をしていた。自分自身を傷付け自己満足していた。でも、耐えてきたじゃないか。
 そう、耐えてきたんだ。
「……んでもって、偽善者にも良い人が居るのかも…って、思った」
 頭上に広がるユニバース。星が流れ、彼方へと消えゆく。
爛々と輝く光は何を示し出すのか。きっと、胸の内の綺麗な部分。心の片隅に寄り添っている、何よりも美しく輝いているもの。
 今まで考えていた事、悩んでいた事が水泡のように弾け、飛び散る。胸の中心に居座っていた闇よりも暗い汚い感情が、目前に広がる幾千の光に押し潰される。そうして残ったものは左手首の傷跡と、いつの間にか頬を伝っていた涙。空っぽになる。でも、無ではない。
「……馬鹿だなあ、もう、手遅れだ」
 左手首を押さえる。この傷はもう消えないだろう。でも、良い。これで良い。
「でもさ、おっさん。これがあったから気付けたのかも…って思うんだよね」
 だって、今日ここで手首をカッターで切ろうとしなかったら、この人はここに留まっていなかっただろう。さっさと帰路に着いていた事だろう。
「そうか、そうだな。……傷付いて、傷付けて初めて分かる事もあるのかもなあ。それに、それがなかったら俺と会ってないしな?」
 男が、くくっ、と喉で笑う。
作品名:7月の夜、公園にて。 作家名:桐伐り