7月の夜、公園にて。
男はそう聞き、同じように空を仰ぐ。
「あぁ、そういえば今日は七夕だったな」
こんなにも綺麗だっただろうか。夜の暗闇はいつも自分を不安にさせた。夜空が与えてくるものはいつも負の感情だった。こんなに、綺麗だっただろうか。見入ってしまう程輝いていたか。
「……七夕?」
目の前にあるのは光だ。数えられない程の光。今まで悩んでいた事全てが馬鹿らしく思えてくる。身体を傷付けて、自己満足していた自分が恥ずかしい。
「くくっ、なんだぁ?知らないで此処にいたのか」
笑われてしまった。顔に熱が集中する。
「あぁ、何かすまん。話途切れちまったな。続き、頼む」
あ、流れ星。初めて見た。
「おい?」
「……え?…あ」
星を意識して見るのは初めての事で、つい熱中してしまった。自分らしくない。
「……もう、良いや」
「……やっぱ、言いたくないのか?」
男の眼が細くなる。今にも泣きそうな、そんな表情。何でこんな顔をするんだろう。変わった人だ。
「……初めて」
故意に間を置く。
作品名:7月の夜、公園にて。 作家名:桐伐り