7月の夜、公園にて。
学級委員長を思い出す。担任の先生を思い出す。偽善者に関わると更に傷付くだけ。嫌な想いを味わうだけなんだ。
「ほっといてくれない?偽善者ッ!」
今すぐに左手首にカッターを当て、切り裂きたい。流れる血をあいつらに見られる妄想をして自己満足したい。
「偽善者にでも、吐いちまえば少しは楽にはなるぞ」
カッターを奪われてしまった。手で追う。
「俺は偽善者かもしれねえ。でもな、聞いて、アドバイスくらいはくれてやれるんだよ」
ヒュンッ、と音が鳴る。どうやら男はカッターを放り投げたようだ。
「……ぁ」
カッターが何処に落ちたのか分からない。あれがないと安心出来ないのに。胸ポケットのあの重みがないと、学校に行けない。耐えられない。
「何でも良い。言いたい事、吐き出したい事。何でも良いから」
優しげで、悲しそうな瞳。大嫌いな瞳だ。だって、縋りたくなる。自分は弱いから、縋ってしまうのだ。そうして見放され、傷付けられる。学級委員長も、先生もそうだった。
「……ッあんたみたいな、偽善者が大嫌いで――」
何故だが涙が込み上げてきて、涙を零さないように空を仰いだ。真っ黒な空には闇はなく、そこには光が沢山あった。つい言葉を止め、見入ってしまう。
「どうした?」
作品名:7月の夜、公園にて。 作家名:桐伐り