短い恋
午後からはダブルスのトーナメントです。ペアになってくれますよね。わたし頑張りますから。でも、本当のメインは、土曜の夜のキャンプファイアーと飲み会です。一生の想い出になるような、予感があるんです。だから、断ったりしないでください」
麗奈はいかにも愉しそうに明るく説明を始めながら、後半は媚を含んで艶っぽいような迫り方だった。
早川は間近に聞くその若々しい声も、その美貌に相応しく魅力的なことを、全身が痺れるような感覚と共に実感していた。決して甲高くはなく、あくまでもやわらかくて優しい声である。そして、その発音が正確できれいなことは彼女の清楚な印象と呼応していた。
「その合宿にストロークから参加するのは何人ですか?」
「早川さんが参加していただけるとしたら、二名です」
「もう一人は?」
「お薦めのいい子ですよ……弓浜麗奈っていう子なんです」
おどけた云い方だった。運転しながらのことなので、早川は一瞬だけ麗奈を横目で見た。
「これからファミレスで何人か誘うんですよね?」
「いいえ。早川さんだけなので、このことは内緒です。約束ですよ」
麗奈の真剣な表情も、実に魅力的だ。
「……そ、そういうことですか。その気になっていいなら、さ、参加しちゃいますけど……」