短い恋
「そういうのをね、世間一般では、冗談がきつい、って云うんです」
たとえどれ程の美人でも、嘘を云うことは許せないと、早川は思った。
「だって、本当なんですって、早川コーチ」
「じゃあ、仕返しです。弓浜さんは、ホクロがあるんですよね。あそこと、あそこと、あそこに」
早川は笑った。
「えっ!急に凄いこと云うんですね。びっくりです」
麗奈は血相を変えたが、早川は満足げな笑みを浮かべている。
「冗談ですよ。だけど不思議ですね。もしかして前世で出会っていたとか?そんな気もして来ました」
「それでホクロの場所を知ってるんですね。ただならぬ仲だったのかしら……」
「だから冗談ですよ。おへその横にあるなんて、全然知りません」
「残念でした!そんなところにはありません」
二人で声を挙げて笑った。
信号が青になり、車は発進した。間もなく麗奈は、以前よく顔を出していたというテニスサークル「トップスピン」の合宿に、早川を誘った。
「急な話で申し訳ないんですが、あと三日で準備してください。強化合宿とかじゃないんです。土曜日の午後と日曜日の朝、軽い練習をすることになってます。