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短い恋

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だからこの瞬間に、不本意な事故に巻き込まれ、死んでも悔いは残らないとさえ、彼は思う。二日前の日曜日に早川は釣りに行き、期待以上の大物を釣り上げていた。そのとき、近い将来にもう一度何か大きな幸運に遭遇するのではないかと、予測してもいたのだった。
「ご迷惑をおかけして、ごめんなさいね」
「迷惑じゃないですよ。いつものあのファミレスでいいんですよね」
「はい。そうです」
「だったら帰り道ですから、気にしないでください」
 麗奈の話では、先にファミリーレストランへ向かった二台は、どちらも定員一杯になってしまったらしい。だが、積み残されたのが彼女だったということが、早川は腑に落ちなかった。それは、麗奈がどの車に乗るかということになると、必ず彼女の奪い合いになるのが常だったからである。その謎を解明したいものだと思ったものの、どのように問えば良いのかが、彼には判らなかった。
(せっかく絶世の美女を乗せることができたのだ。理由なんてどうでもいい)
 沈黙の息苦しさを打開したくて早川は自己紹介をしようとしたが、麗奈はほかのメンバーから聞き、彼の大体のプロフィールを知っていたことが解った。
 赤信号で車は停止した。麗奈も自己紹介をしようとしたが、早川もそれを遮った。そして、彼女に関してはかなり情報収集していたことを告白した。
「そうですか。でもね、絶対に早川さんが驚く情報があるんです」
「いいえ。弓浜さんに関しての情報で驚くなんて、あり得ませんよ」
「今のわたしは、初めて早川さんとお話するような気持ちですが、実はね、ずっと前からの知り合いなんですよ。わたしたちは」
作品名:短い恋 作家名:マナーモード