短い恋
アスファルトの道路に、一台の車が停止している。黒い車体の屋根の上に、緑色の光。タクシーだ。これでもう安心だ。
空車のタクシーの運転席に、乗務員の姿はなかった。こんな緊急のときに何をしている?
早川は扉を開け、乗り込んでスタートした。
「事故だけはやめてくださいね」
後部座席から聞き憶えのある声が云った。
ルームミラーを見ると、その中に映っている二人は、早川の死んだ両親だった。余りに懐かしいので話したいと思うが、声は相変わらず出ない。
道路をポニーテールの女性と麗奈が並んで走っている。そのポニーテールの後ろ姿はポニーさんらしい。車の速度が落ちてきた。追い抜いて二人の顔を見たいのだが、どうしてもそれができない。
「願い事を三回唱えると、その願いが叶いますよ」
云ったのは麗奈なのかポニーさんなのか。声が聞こえたのにどんな声だったのかが解らない。
「サイトメールだからです」