短い恋
やがて弱い炎の明かりが、離れて横たわる動かない男女を否応なく確認させた。
彼はもう一度麗奈の元へ行き、次第に体温を喪って行くだろうやわらかい身体を抱きしめた。
早川の涙は際限もなく流れ続け、麗奈の顔を濡らした。
遠い炎からの弱い光を、何かが遮った。眼を転じるとキャンプファイアーの炎を背負いながら、大勢の若者たちが走って来るのが見えた。
早川は再び麗奈を抱き締めた。
ごめんね。麗奈。一番大事な麗奈を、どうして護ってあげられなかったのか、解らないよ。しあわせにできなくて、本当に、ごめんね。
彼は一緒に添い寝してあげたかったが、背後を見て断念した。憤った表情の若者たちの群れは、すぐ近くまで迫っていた。
次の瞬間、小川を飛び越えた早川は、闇へ向かってスタートを切った。彼は全力で走りだした。闇の中に続くこの路は、どこへ導いてくれるのだろう。とにかく、今は走り続けるしかない。