短い恋
「学さん。それって、KYの標本よ。この緊急事態に超余裕ね。佐武さんは喧嘩も強いらしいわ」
「麗奈さんも意外に強そう。私を護ってください」
「そうしてやりたいけど、相手が悪すぎるわ」
「元プロレスラーじゃあ無理か……さっきのカレー、味がおかしくなかった?佐武が毒を入れたりしてないか、心配だな」
キャンプファイアーの近くで、何かが始まりそうである。燃える井桁の周囲に、太い木を輪切りにしたものが並べられつつあった。随分重そうに運んでいる若者たちが多い中、如何にも軽々と運んでいる男の姿もあった。それが佐武だった。
やがて始まったのは、椅子取りゲームだった。勝者にはTシャツを贈呈すると、拡声器を使って告げられた。それを聞いても暗がりの二人は勿論じっとしていた。濡れたTシャツを着ている早川も黙っていた。
「足が震えているわ。学さん」
「だ、大丈夫。少し、乾いて来たし」
ゲームは盛り上がり、何度も歓声が上がった末、決定した勝者は女性のメンバーだった。