短い恋
「えっ!祇園坂さやか!?そうだったのか?そういうことなら手加減したのに、意地っぱりなんだなぁ、彼は」
「やっぱり学さんがその大会の優勝者だったのね!似ているような気がするって、佐武さん云ってたけど、でも、名前でわかるんじゃない?」
「意外と忘れるものさ、名前って。そうかぁ、あの時の相手は佐武だったんだぁ……数えてみると十六年前だよ。古い話だなぁ、でも彼女と優勝は関係ないよ。だってテニスを始める前から付き合っていたんだからね」
「ねえ、ところでその、さやかちゃんとの交際、どこまでいったの?わたしは何にも知らないであなたの追っかけしてたのよ。昔のことでも口惜しいわ」
「……あれ?云ってなかった?さやかちゃんは犬だよ」
云った途端に麗奈がビールを噴き出し、早川の左肩を中心にびしょ濡れにした。麗奈はハンカチを出して早川のTシャツを拭きながら、
「ごめんなさーい。だってあんまり面白いこと云うんだもの」
「そう云えばさやかちゃんは、尾も白い犬だったよ。面白くない?」
早川は麗奈に頭を叩かれてしまった。