短い恋
麗奈は血相を変え、早川の手を引いて走りだした。
「えっ?急に何なの?」
「ちょっと事情があるの!急いで!」
キャンプファイヤーの炎がやっと見える場所まで離れると、麗奈は丸太のベンチを発見した。すぐ傍には、小川が流れる音がしている。
早川が持参して来た懐中電灯で照らして見ると、勢いのいい流れの中には、ネットに入れられた缶ビールが沢山冷やされていた。
早川はそこへ降りて行き、冷えたビールを二本取って来た。
「ここはいいところだね。でも、何で逃げたりする訳?」
「わたし、この前あのひとに告白されて、断ったの。あとを追われてきたみたいで、怖いわ」
「それは気まずいね」
早川が缶を開けてひとくち呑むと、麗奈も同じ動作を踏襲した。
「それだけじゃないのよね。この前ファミレスへ行ったら聞こえたの。佐武さんが高校生の時、テニスの大会で優勝すれば推薦で大学に入れたかも知れないのに、準優勝だったらしいのね。で、そのとき佐武さんが片思いしていた相手の、難しい名前だったわ。何とかさやかという子も、優勝者に持って行かれたとかって……」