短い恋
大型のラジオカセから懐かしいメロディーが流れ出した。フォークダンスが始まったのだ。
「軽トラで住宅地を回っていた頃、あれと同じラジカセを回収できたときが、一番嬉しかったな」
「そうなの?パソコンとかじゃないのね」
「ラジカセは重くないのに、結構いいお金になったからね」
「学さんは、苦労してきた人なのよね。わたしは何一つ不自由なく育てられて、申し訳なくなっちゃうわ」
麗奈はまた涙ぐみ、早川の手を握った。
早川がトップスピンのリーダーの視線を気にしていたときだった。突然どこからか、ふてぶてしく横柄な態度で、ストロークのリーダーの佐武太朗が現れた。炎に照らされているせいだけではなく、日焼けと酔いのせいもあってだろう、佐武の顔は異様に紅黒く染められていた。彼はフォークダンスの輪に入ったものの、足もとが覚束ないために、周囲からの顰蹙を買っている。
その姿を見て早川と麗奈は呆然とした。
「何で彼がここに来ているんだろう」
「学さん!わたしと逃げて!」