短い恋
「麗奈さんが遠いところへ行ってしまうからさ……足はもう痛くない?」
そのことばを聞いた麗奈は、大きな眼から畳に涙をこぼした。
「わたし、学さんを置いて遠いところへなんて行きたくないわ。映画のことはもう一度考えるから、哀しまないで!」
湯上りの火照った身体の麗奈が、早川に抱きついた。
「お嬢さん済みません。熱いんですけど」
その刹那、周囲が気になって見回すと、何人か笑いを噛み殺しているのが判った。
「皆様お騒がせしてごめんなさい。この人近々映画に出ることになったんですけど、人気が出ると思いますか?」
「学さん!冗談はやめて!」
麗奈は見知らぬ人々に、
「おくつろぎのところ大変失礼しました」
そう云うと慌ててそこから出て行った。