短い恋
今日が徹夜明けの早川に代わり、全行程の六割は、麗奈が運転してくれたのだった。料金の割引の影響もあり、高速道路の渋滞は想像を絶する規模だった。到着が大幅に遅れたので、漸く二人が辿り着いたテニスコートには既に誰も居なかった。
ポニーさんが運転させられているバスも、マニュアル車なので気が重いのだと、早川は今朝の伝言で彼女から報らされていた。
「長時間の運転御苦労さま。感謝してます。麗奈さんはいい人だなぁ。努力家なのかな」
「見直してくれたのね」
「感動させて頂いたよ……足の痛みが早く取れるといいね」
早川は本当に感動を覚えていた。彼のまぶたから涙が溢れそうになっているのを見ると、麗奈も泣きそうな声で応えた。
「温泉に入ったら良くなるから、心配しないでね、学さん」
「そうだね。若いから、回復は早いだろうね」
「学さん、実は……わたし、女優デビューすることになったの!」
それについては、早川は既に予感していた。だが、その事実を突きつけられると、絶望的な想いに襲われた。