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短い恋

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早川が出場するテニスの大会があると、麗奈はいつも観戦していたと云う。つまり「追っかけ」をしていたわけである。新幹線に乗って観に行ったこともある。そう、昨夜の麗奈は涙声で告白した。
 早川が一旦テニスと縁を切ったのは、大学を卒業したときだった。
早川の消息がそれ以来途絶えたのは何故だったのか。麗奈はそれを追及したが、彼は応えなかった。
 早川がいつか芸能人としてテレビ画面に登場すると、麗奈は確信していた。彼女のクラスメートたちも、テニスの雑誌に掲載された早川の写真に見とれながら、そう云っていたらしい。
そのときをあてもなく心待ちに過ごして来た麗奈だったが、周囲の勧めもあって劇団の扉を叩いた。自分も芸能人になれれば、早川との再会が早まると信じた。
だから、麗奈は偶然メンバーになった「ストローク」の中で、相変わらず精悍な早川の姿を発見したときは、固まってしまったと云う。
二日後の土曜日に、どこへ行けば良いのかを彼女に確認すると、早川は通話の終了と相次いで携帯電話の電源を切った。翌日の金曜日は、仕事が忙しい場合が多いからだった。
 最後に携帯電話から聞こえたのは、麗奈の嗚咽する声だった。
 早川の両親を乗せた車が、高速自動車道上の渋滞の最後尾に、推定速度時速百四十キロで突っ込み、炎上したのは、十一年前のことだった。
作品名:短い恋 作家名:マナーモード