短い恋
「今は……裸なの。お風呂上がりだから」
早川の頭の中に、美しい裸体のイメージが広がった。
「そ、そうですか。お風呂上がり……」
「わたし、学さんが好きなんです」
早川は今、とても信じられないことを耳にしている。
「本当ですか?じゃあ、同じ気持ちですね」
「好きです。大好きです。学さん」
切れてしまった。少し開けてある窓から、遥かに遠い電車の通過音と、緊急自動車のサイレンとが重なって聞こえた。タクシーが関連する事故があったのかも知れないと、早川は思った。そう思うと一瞬、早川はポニーさんの身を案じたが、彼女の出番も明日なのだと思い直して安堵した。
そして、明後日にはまた彼女の日記を読めるのだと思うと同時に、早川は妹が一人増えたような錯覚をしていることに、漸く気付いたのだった。