短い恋
ポニーさんが取得済の免許は、大型二輪、大型二種、大型特殊というのだから凄い。
写真さえ見たことのない彼女だが、心の優しい乙女である。会わない約束でマイフレンドになって貰ったが、彼女の爽やかな日記を読めるだけでも幸運と思うべきだろう。恋愛には縁がないと云っているが、本当はカレシがいるのかも知れない。
彼女がタクシーの苛酷さを把握し、低収入に呆れてしまうなら、路線バス会社に移籍してしまうこともあり得ると、宅配弁当を食べながら早川は想う。
そうなれば彼女は商売敵であり、もはや啓蒙できることもなくなり、タクシーという仕事にまつわる情報を提供しても、共感を伴わない白々しいやり取りになってしまうだろう。
明日の乗務に差し支えるのでそろそろ就寝ということにしよう。
早川は目覚まし時計をセットしたが、やはり麗奈のことが気になった。だが、今はもう午後十時を回っている。起床は四時だからタイムリミットである。
照明を消し、横になってから気がついた。麗奈の外見の美しさは確かに脱帽ものだが、その内面に想像できるのは狡猾さかも知れない。偏見かも知れないのだが、気のある素振りをばらまきながら、最も得な相手を物色しているようなことはないだろうか。
可能な限り積極的に、そして地味に、誠実に生きるポニーさんと比較してしまったために、そんな色合いが浮かび上がって来てしまったのかも知れなかった。