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奪われた過去

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 その向こうから、渓流の音とは別にまた、再び湯を浴びるような音が聞こえた。緒方は緊張していた。鼓動が速くなっているのも判っていた。
「佐井さん!正論出版の、佐井さんはいませんか!」
「……はい。そちらは、緒方さんですね?」
仕切りを挟んでの会話が始まった。面白い展開だと、緒方は思った。彼は笑顔になった。
「そうです。眼鏡、ありがとうございました。助かりました。きのうは湿布をして貰って、夕食もごちそうして頂いて、お酒もおいしくて……心から感謝しています」
「ねえ、緒方さんは、近いうちに結婚したいって、前に云ってましたよね」
「ゆかりさんと、できたら結婚したいと思っていました。そう思って、云ったことでした。電話で何度も佐井さんと話をしているうちに、このひとは絶対にいいひとだと、信じていました……仕切りを挟んで話すのもおかしい気がしますが、今夜、お見合いのようなことをお願いしたいのです……泊り客は私一人という話でした。ゆかりさんは、この旅館の一人娘でしたよね」
電話でゆかりの声だけを聞き、中年女性だと思っていたことは、永久に封印しなければと、緒方は思った。
「ええ。そうです。驚かせてごめんなさいね。わたしね、両親に緒方さんのこと、もう、話してあるんですよ。あなたを置き去りにして、急いでここに帰って来ました。両親に理解してもらうために、そういう行動をとりました。ごめんなさいね。でも、緒方さんに会ってみて、父もあなたを気に入ってくれたみたいです……わたし、昨日実物の緒方さんを見て、余計に好きになりましたよ。問題は緒方さんが、改めてわたしを気に入って頂けてるかどうかです」
 
作品名:奪われた過去 作家名:マナーモード