奪われた過去
アルミの容器に入った水が用意されていた。早速飲むと苦くて癖のある味が口の中に残った。
「苦いから効くの。そんな顔しないで。毒でものまされたと思った?」
「そんなことは思いません。何の恨みもないでしょう。普通に出会う人は全部まともな人だと思ってます。っていうか、いい人ばかりなんだなぁって、思っています」
「戻ると、少し上に橋が掛ってます。お気を付けて、さようなら」
緒方は何年か前に交際していた少女を想い出した。それは、お下げ髪の少女だった。今別れた女性とは、外見はまるで似ていなかった。だが、性格としてはいくらか似通ったところもあるような気がした。