メアリー
「おいよせよ、くすぐったいじゃないか」
そう言いながら健一さんはあたしの肩に手をまわして、軽く地面に押さえつける。
あたしは逆らうこと無く白い砂浜に横たわった。
「メアリ、僕のことが好きなのかい? 僕も初めて会った時から、いや会社でキミのパパにキミのことを聞いた時から大好きだったんだよ」
『ああ嬉しい』あたしは心の中でつぶやいた。
「あ~あ、キミが人間だったら良かったのに…… 幾ら血統が良くってもレトリーバーじゃなぁ」
『そんな事ちっとも気にしないのに……』
あたしは悲しい気持ちになって、前足を組んだ上に顔を乗せて目を閉じた。
おわり
03.01.16
№015