メアリー
<メアリー>
夕食の後、健一さんが散歩に誘ってくれた。
あたし達は少し遠回りをして夜の海を見に行くことにした。
海岸に明かりはないけど、今夜は満月なので少しも怖いことなんてないもの……。
健一さんとあたしはぴったりと寄り添って、急ぐことも無く、かと言ってことさらゆっくりでもなく、県道脇の少し砂の浮いた、ガードレールの無い歩道を歩いて行く。
気持ちの良い夜風の中に潮の香りがして、優しい波の音が微《わず》かに聞えてきた。
次の角を曲がると、明るい月に照らされた白い砂浜が見えてくる。
あたしは嬉《うれ》しくなって走り出した。
「おいメアリー待てよ、何も走らなくっても良いだろ?」
健一さんの声は聞えたけど、あたしは止まらなかった。
「早く来て、海岸には誰もいないわ。ただ青いお月様が見てるだけ」
あたしは県道のひび割れた舗装《ほそう》が海岸の砂に潜り込む少し手前で立ち止まった。
☆ ☆ ☆
実を言うとあたしは貰いっ子なのだ。
本当の両親にどんな事情があったかは知らないけど、あたしは生まれて間もなくこの家に引き取られてきたらしい。
両親は共に外国生まれなので、あたしの嫌いな自分の名前もやはりソレっぽいのだ。
天然のブロンドなのでルックス的には合っているのだと思うけど……。
そして、あたしが正式に戸籍に入ってはいない事も小さい時から知っている。
あたしは耳が良いのか、パパが隣の部屋で話をしているのを聞いてしまったのだ。
その時パパが笑いながら話していたのが少し悲しかったけど、パパもママもあたしを心から愛してくれているので気にしたことなんて一度も無い。
だから本当の両親に逢いたいなんて思ったこともない。
でも、年頃になっても恋のひとつもしたことが無いのを心配したのか、ママが何度かお見合いの話しを持ってきた時は困ってしまった。
夕食の後、健一さんが散歩に誘ってくれた。
あたし達は少し遠回りをして夜の海を見に行くことにした。
海岸に明かりはないけど、今夜は満月なので少しも怖いことなんてないもの……。
健一さんとあたしはぴったりと寄り添って、急ぐことも無く、かと言ってことさらゆっくりでもなく、県道脇の少し砂の浮いた、ガードレールの無い歩道を歩いて行く。
気持ちの良い夜風の中に潮の香りがして、優しい波の音が微《わず》かに聞えてきた。
次の角を曲がると、明るい月に照らされた白い砂浜が見えてくる。
あたしは嬉《うれ》しくなって走り出した。
「おいメアリー待てよ、何も走らなくっても良いだろ?」
健一さんの声は聞えたけど、あたしは止まらなかった。
「早く来て、海岸には誰もいないわ。ただ青いお月様が見てるだけ」
あたしは県道のひび割れた舗装《ほそう》が海岸の砂に潜り込む少し手前で立ち止まった。
☆ ☆ ☆
実を言うとあたしは貰いっ子なのだ。
本当の両親にどんな事情があったかは知らないけど、あたしは生まれて間もなくこの家に引き取られてきたらしい。
両親は共に外国生まれなので、あたしの嫌いな自分の名前もやはりソレっぽいのだ。
天然のブロンドなのでルックス的には合っているのだと思うけど……。
そして、あたしが正式に戸籍に入ってはいない事も小さい時から知っている。
あたしは耳が良いのか、パパが隣の部屋で話をしているのを聞いてしまったのだ。
その時パパが笑いながら話していたのが少し悲しかったけど、パパもママもあたしを心から愛してくれているので気にしたことなんて一度も無い。
だから本当の両親に逢いたいなんて思ったこともない。
でも、年頃になっても恋のひとつもしたことが無いのを心配したのか、ママが何度かお見合いの話しを持ってきた時は困ってしまった。