星へ発つ船
「――ごめんよマーくん。でもね、あのロケットのヒト達も、ここに居るマーくんも、お父さんも行く場所は結局同じなんだよ。 ロケットの方がちょっとだけ早いだけなんだ」
子供の言葉はこの場所に来るたびに繰り返される、決して叶う事の無い望みであった。
ふと見るとロケットが飛び立った方向、一番星のやや左で一瞬大きな星が閃光を放って消えた。
「お父さん、あのロケットのヒト達も星になったの?」
「ああ、お母さんと同じ場所へ……逝ったんだよ」
帰り道――。
肩車の親子の影は長く伸びて、後にした宇宙飛行場のフェンスにまで届きそうな程だった。
もはや人類は環境の改善計画を完全に諦めてしまった。
移住できそうな惑星も、候補を幾つか特定したに過ぎず、惑星間航行技術は未だ太陽系を横断するのでさえやっとの事で、移民などは遥か遠く及ばない事だったのだ。
おわり
03.01.12
№014