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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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星へ発つ船

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<星へ発つ船>

 新世界暦一〇八年、人類はかつて無い深刻な環境問題に直面していた。

 産業後進国の急速な技術の進歩は、人間の欲望を満足させる事を最優先させたため、豊かな暮らしと引き換えに、複雑に合成された環境汚染物質が大量に垂れ流しされてしまったのだ。
 勿論、クリーン&エコロジーを看板に掲げる先進国の企業達も急速に立ち上がる国々から利益を吸い上げることにおいて抜かりが無かった事は言うまでも無い……。
 汚染物質は季節風や海流に乗り地球上のあらゆる場所に広がって行った。
 海に流れ出た汚染物質は魚介や海草などをとおして人間に取り込まれ、空気中に流れ出たソレはゆっくりとしかし確実に大陸内部へ浸透して行った。
 そして気付いた時には既に引き返せない程の状況になっており、世界の人口は最盛期の三十パーセント程度にまで減ってしまっていた――。

 人々はいつしか俄かに脚光を浴び始めた、他の惑星への移住に淡い期待を抱くようになっていた――。

「ねぇお父さん、あのロケットは星に行くんだよね?」
 父親に肩車した小さな子供がフェンスのはるか向こうにある打ち上げ設備を指差した。
 そこではロケットの機体の銀色が日暮れ前の低い太陽を反射して眩い輝きを放っているのが見えた。
「ああ、そうだよマーくん。お金の使い道を無くしたヒトたちが最後のお金を積み上げてあの船達を作ったんだよ」
 寂しげな視線を宇宙(そら)にむけたまま父親が答える。
 そしてまた、一機のロケットが煌く様な光に長い煙の尾を引いて飛び発って行った。
 ちいさな子供は父の言った言葉を理解できないのか、きょとんとした表情で上から父親の顔を覗き込む。
「ねぇお父さん、ボクもロケットに乗りたいよ」
作品名:星へ発つ船 作家名:郷田三郎(G3)