不思議な空間
そのあと二階へは行かず、北は玄関から屋外に出た。見上げると美しい星空が圧巻である。彼は砂浜に向かって坂を下りて行った。
「北さん。待って!」
追ってきたのは祥子だった。北は立ち止った。
「祥子さん。明日はどうするの?」
「北さんの車に、乗せて欲しいの」
暗くて殆ど表情を読めない。しかし、声で笑顔を感じた。
「大歓迎だよ。祥子さんが行きたいところなら、どんなところにも行きたい……」
「嬉しいわ」
ふたりは手を繋いで歩いて行った。
「ここは初めて来た場所なのに、不思議だね。昔から知っていたような、親しみ易さを感じさせてくれる」
「偶然一緒になった人たちも、勿論、北さんも、前からよく知っていた人と再会したみたいな、不思議な出会いだったわ」
「祥子さんをずっと前から好きだったような気がするよ」