不思議な空間
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やがて蟹雑炊の鍋が煮え立つと、全員がその味を誉めながら食べ始めた。
「つまらないことを云って泣いたりして、恥ずかしいわ」食べながら祥子が云った。
「でも、一生忘れない旅になりました」
北も食べながら云った。
「何か書けそうな気がするよ」
手が止まった佐島は遠い視線になって云う。
「ペンネームは?」と、北。
「本名で書いてるよ」
「探して読んでみます」
「本を持ってくれば良かったな」
佐島は残念そうに云った。
「ごちそうさま。じゃあ、お開きね」
と、満足そうな笑顔の聖子。
「そうだね。みなさんありがとう」
お休みなさいと云い合って全員が立ち上がった。