不思議な空間
「警察に相談しました?」
「ええ。でも警察は、事故の原因はあんたの一時停止不履行だ。脅迫されたという証拠はあるのか。警察は民事不介入だ、と云って門前払いでした」
「ひどいものですね。それが警察の正体ですよ。暴行されて怪我でもしないと、力になってくれない。奴らもただのサラリーマンですからね」
佐島が怒りながら云った。
「タクシーの料金を踏み倒されたときも、やっぱり民事不介入で、あっさり片づけられましたよ」
北も憤りを露わにして云った。
「助けてくれたのはおばあちゃんでした。生命保険を解約してお金をつくってくれました。そして、相手の家に乗り込んで行って、二度と何も請求しないことを一筆書かせました。それでわたしは、救われたんです」
「いいおばあちゃんですね」
北がしみじみと云った。
「そのすぐあとにおばあちゃんは、体調を崩してしまったの……それが原因ではないと思うけど、間もなくおばあちゃんは……」
祥子は泣き崩れた。
「祥子さんがおばあちゃんより長生きすることが恩返しだと思って、頑張って生きてください」
そう云って北は祥子の背中をさすった。