不思議な空間
「それとは対照的な立場だと思ってます」
「でも、抽象画までは行かないんですね」
「抽象画って理論先行でしょう。そういうのはパスですね」
「社会派みたいなのも、好きじゃないでしょうね」
「芸術って、現実逃避でいいと思うんですよ。何かを訴えたいことがあるなら、アジビラを撒いて叫びなさい。という考えですよ」
「そこのおふたりさん。みんなでお話しましょ」
由紀が苦笑しながら云った。
「そうでしたね。OLさんたちは愉しく仕事してますか?」
「それがね、この前のミーティングで、電話の対応が悪いって云われて……」
由紀は悩んでいるらしい。
「電話でのお仕事が多いんですね?」
「そうなんです。今度、電話の受け答えは、マニュアルに従ってもらいたいなんて云われて……」
「得意先で電話対応の苦情を聞かされたのかな」
「そうかも知れません」と、由紀は俯いた。
「でも、そんな事いちいち云われたくないですね。細か過ぎて疲れます」と、聖子が云う。