不思議な空間
チェロの響き
「馬の尻尾の毛ですけどね、古くなると切れるんです。私は聴かせるほどじゃないんですが……」
「だめなんですか?期待したんですけど」
祥子は眼に酔いがでている。
「うーん。美女に云われたら持ってくるしかないな」
「やったー!こういうハプニングは想い出になるわね」
聖子は嬉しそうに云った。佐島は意外に軽々と立ち上がって出て行った。
「祥子さんはどんな絵を描くんですか?」
北の質問に対して彼女は、
「視覚的な詩、みたいな、心象風景的なものが多いと思います。心の中をできるだけ素直に描こうとしているの」
「ファンタジックなものですね。癒し系の……パステルカラーで、軽くね」
「スーパーリアリズムってわかりますか?」
「写真のようにリアルに描いた絵ですね」