不思議な空間
主人がコンロに火を入れに来た。
「ご主人はどうですか。お酒は」佐島が一升瓶を持ちあげて云った」
「ありがとうございます」
ひげの主人は嬉しそうに礼を云ったものの、厨房のほうへ行ってしまった。
「実はね、私は小説家です」
佐島が云った。
「えっ!?凄い!」聖子が大げさに驚いた。
「小説家ですか。会社員だと……」
北がつぶやくように云った。
「小説だけでは食えないから、勤めてますよ。マイナーな文学賞を受賞したんですが……」
「賞金はどのくらいですか?」
「百万です」
「それは凄い!マイナーじゃないですよ」と、北。
「わたしも百万円欲しい!」聖子が叫ぶように云った。
「もらったら海外旅行かな」由紀が夢見るように云う。
「個展ですね。わたしは」祥子が云った。
「個展ですか……」