不思議な空間
「北さん。思い出してあげて」
由紀が笑顔で云った。
「夜中の二時頃でしょうか?」
「そうだったかも知れません」
「私たちも乗せて頂くかも知れません。
そのときは割引してくれないかしら」
聖子が笑いながら云った。
「それをやったら『これ』です」北は首を手で切る真似をした。
「そう!厳しいんですね」由紀が眼を丸くした。
「冗談です。いけないのは逆に、多く取った場合です」
「じゃあ、割引、決定!」
「居酒屋タクシーはどうなったんですか?」と、聖子が訊いた。
「まだやってるでしょうね。この前それらしい雰囲気の個人タクシーのナンバーを見て、お客様と一緒に笑いました」
「車のナンバー?どうしてですか?」
「5959だったんです。つまりゴクゴク……」
全員が笑った。