不思議な空間
「ここに日本酒がありますけど、とりあえずビールでも飲みましょうか」
「賛成!」聖子と由紀が声を合わせて云った。遅れて祥子と北も賛同した。その直後、佐島が立ち上がって注文をしに行った。
「初めての一人旅でしたよね」
「一度は体験したくて……」
「そこのおふたりさん。明るくしてね」
聖子が云った。
佐島がビールの瓶を四本持ってきた。グラスはそれぞれの膳にあった。佐島が北に注いでくれた。北は瓶を受け取り、祥子のグラスを満たした。
「乾杯!」と、佐島が云い、ほかの四人も云ってグラスを傾けた。
「この、焼き蟹というやつは美味いね」
佐島のことばに聖子が応えた。
「ここのは特にね」
「お刺身も美味しいわ」由紀だった。
「かなり新鮮ですね」と、北が云った。
「自己紹介をしますよ。私は佐島善三です。職業は会社員で、趣味はサイクリングです。次は由紀さんかな?」
反時計まわりということになる。
「河原由紀です。峰木さんと同じ会社に勤めてます。趣味は登山です」
「峰木聖子です。独身です。趣味は河原さんと同じです」