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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第八回・四】ドンブラスココ

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バンっと車のドアが閉まる音と坂田の声がした
「どこいってたんだよ;」
阿部に胸倉をつかまれたままの京助がスーパーの袋二つを手に歩いてきた坂田に聞く
「母さんがスイカもって行けって言ってたの忘れててよ;」
「運転してきたのは柴田さんじゃないのね」
いつの間にか岸に上がってきていた本間が坂田が乗ってきた車を見て言った
「柴田はまだ療養中」
坂田が言う
「そう…」
本間が濡れた髪を掻きあげた

「おはよう阿部」
そして阿部の方を見て言う
「香奈…アンタなんで平然としてられるのかアタシわかんない;」
阿部ががっくり肩を落としながら言った
「私魔法とか信じないもの。現実だから受け入れるだけ」
本間がヒマ子を見てふっと笑う
「なぁ…; 俺も泳いできていいか?;」
京助がボソッと言った
「アンタも頭冷やしてきたら?」
阿部の肩をたたいて本間が言う
「京助~!! 競争~!!」
悠助が制多迦に肩車されながら岸に向かって手を振っている
「お--------!! 今行く------------!!」
大きな声で返事を返すと京助が海へと下って行った
「緊那羅はいかねぇのか?」
スイカを手に坂田が緊那羅に聞いた
「ラムちゃんも水着着てくればよかったのに」
阿部が緊那羅の格好を見て言う
「胸の大きさ同じくらいだし…」
「え?」
最後に阿部がボソッと付け足して言うと緊那羅が首をかしげた
「別にッ;」
阿部が海に向かって駆け出すと坂田もそれに続く
「ヒマならスイカ流されないように見ててくれ!」
思い出したように坂田が振り返って緊那羅に言った
「あ…わかったっちゃ」
緊那羅が立ち上がって小走りで海へと下る

「…僕も行こうかな」
矜羯羅が立ち上がった
「君は?」
防波堤の上に腰掛けている乾闥婆に矜羯羅が聞く
「僕は遠慮します」
矜羯羅の方は見ないまま乾闥婆が答えた
「…爆弾落とされるよ?」
さっき迦楼羅に言ったのと同じことを本間が乾闥婆に言った
「よっこいしょ」
本間が乾闥婆の横に腰を下ろした
「泳がないんだね」
本間が乾闥婆に言う
「ええ…僕は…」
「はい」
顔を本間に向けた乾闥婆に突きつけられたのは乾闥婆の目と同じような青い色のラベルが巻かれたペットボトル
「…これは?」
そのペットボトルに手を添えながら乾闥婆が本間を見た
「泳がないなら水分とりなさい」
本間がにっこりと笑った
「あ…りがとうございます…」
ペットボトルを受け取った乾闥婆がどもりながらもお礼を言う
「大事な人の心配も大事だけど自分が倒れちゃその大事な人の心配もできないんだからね」
蓋の開け方がわからないのかただペットボトルを持ったままだった乾闥婆の手に手を添えると本間が蓋を開けた
「…ええ」
乾闥婆の手から手を離しながら本間が言う
「私は魔法とか信じないから。アンタ達を特別扱いもしない…でも驚いているのには変わらないんだからね? わかりにくいけど」
自らも持ってきたペットボトルの蓋を開けながら本間が言った
「だからなんです?」
乾闥婆が本間を見た
「話してほしいの栄野にも私達にも」
ペットボトルに口をつけながら本間が言う
「…私阿部が泣くところ見たくないの」
本間と乾闥婆が座る防波堤の下の海で笑う阿部を見て本間がふっとどこと泣く寂しい笑いを浮かべていった
「阿部は栄野が好きだから栄野に何かあると泣くってわかるよね」
本間が聞くと乾闥婆が頷いた
「だから少しでも知っておきたい。そうすれば…」
「…あなたは…もしかして…」

ポトッ

言いかけた乾闥婆の言葉が止まった
「…やられたね」
動きが止まった乾闥婆の頭上には一羽のカモメ
そして乾闥婆の水色の髪には白い…
「爆弾投下」
本間がペットボトルの中身を一口飲みながら言った

「あれ? 乾闥婆…」
南が大股で海にやってくると無言のまま海の中へと入ってきた乾闥婆の名前を呼ぶ
「…泳がないんじゃなかったの?」
しっかり泳いだらしい矜羯羅が濡れた髪をかきあげながら言った
「…気が変わったんです」
そう言うといきなり乾闥婆が海の中に潜った