トワイライト・ゾンビー
一瞬未明の頭の中は真っ白になった。
「助けなきゃ……」
通常、この時間帯に屋外でどのような声・物音がしようとも、人々は決してドアを開けて外を窺ったりはしない。
ましてや外に出るなんてことは……。
未明もいつもの自分であればそのような事はしなかったであろう。
だが、この日の未明がいつもの未明であろうはずが無い。
ほんの一瞬前まで、あの子供と同じ目に遇っていたのだから――。
未明は夢中で駆け出した。
幸い、ゾンビ達は新しい獲物に夢中で背後から追い越されるまで未明には気付かない様だった。
そしてその子供のところまで来た。
「こっちに来なさいっ!」
未明は叫んだ。
這いつくばって逃げていた子供と目が合った。
小学校の三~四年くらいだろうか、近頃の子供にしては珍しい、あどけない感じの、男の子だった。
男の子と同時にゾンビ達も未明に気づいた様だ。
だが、未明に目標を切り替えようとするゾンビ、あくまで子供に執着するゾンビが入り乱れて、うまく動けなくなった様だった。
「キミ何年生? 名前は?」
相手の素性を認識したがるのは職業からのことだろうか?
「四年生。サクマアキラです。」
泣き声で殆ど聞き取れなくても、しかたの無い事だろう。
「どこもやられてないのね? もう少し走れるよね?」
そう言った時には既にアキラの手を取り走り出していた。
作品名:トワイライト・ゾンビー 作家名:郷田三郎(G3)