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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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トワイライト・ゾンビー

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 但し、夕暮れになって明かりが灯らないと見つけ難いし、法で定めた基準を満足していないモノもまた多いのだ。
 有り体に言うなら、財政の苦しい自治体ではあまり使われる事の無い施設に金は掛けられないのが実状だった。
 
 ぞろぞろと蠢くゾンビをかわしつつ未明は街灯の下へ急いだ。
 捕まりそうになって、何体かのゾンビを打ち据え、振り払った。
 未明は剣道の有段者である。
 現在は竹刀を握る事も無くなったが、学生の頃は女子部の主将として県の代表にも選ばれた事がある。(残念ながら一回戦敗退だったが……)
 老朽化してボロボロのゾンビは腕が落ちたり、首が千切れそうになっているモノもいた。

 ようやく街灯の下にたどり着くと、未明は避難所のドアに手をかけた。
 避難所は規格適合品である様だった。入り口のドアにはその年の春に受けた検査の合格シールがキラキラと光っていた。
 現在では、小学校から社会人に至るまで、避難所の使用訓練を行う事が法で定められている。未明の勤める雑誌社でもつい最近訓練を行ったばかりであった。
 未明はドアを少し開けると内側の所定の場所にあるスイッチを入れた。
 たちまち狭い避難所の中は明るい光に満たされ、その中に出没していたゾンビは数秒で崩れ落ち跡形も無く消えた。
 そう、光が無ければ避難所の中にでさえ奴らは湧き出てくるのだ。
 避難所の中から溢れてくる光でゾンビ達の作る弧はさらに広がった。
「助かった」
 と思った時、その声は聞こえたのである!
 遠巻きにしていたゾンビ達が一斉に向きを変えた。
 その方向は、未明がやって来たのとは反対の方向だった。
「たすけて!」
 遠いのと暗いのと、何よりゾンビが大勢いるので目では確認できなかったが、ソレは明らかに子供の声だった。