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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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トワイライト・ゾンビー

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 むしろ、これにより人々は夕暮れ前に家路を急ぎ、楽しい団らんは、人々の幸福に多少なりとも寄与しているとも言われているのだ。
 遅くまで営業を続ける商店やオフィスも無い事はないが、家庭用に比べ企業に対する日没後の電気料金は半端でないほど高くなっていた……。

 この日、雑誌編集員である坂下未明は取材時間が思った以上に伸びてしまい傾きかけた太陽が長い影を作るなか家路を急いでいた。
「あ~、どうしてこんな時間になっちゃったんだろう。あのセンセイの話が面白すぎたからいけないんだ。まだ早いと思ってたのに。こんな事になるなら、深夜になるまで居させてもらえば良かった」
 この時間では電車も動いていない、夕暮れ時の数時間は交通機関に携わるヒトまでもが明るい避難所に待避するのだ。

 どうやらこの当りには公共の避難所も無いらしい。
 適当な民家を尋ねても、入れてくれはしないだろう。
 ゾンビの中には人間と区別がつかない程ちゃんとした身なりのモノも居るのである。

 そうこうしてうちに、空が夕焼け色に染まってきてしまった。
 昔のヒトは夕暮れ時に愛を語らったりしたとも聞くが、未明にしても、夕焼けを直に見るのは、ゾンビ出現以前の小学校入学前が最後で、もう二十年近くも見てはいなかった。

 そして、一匹、二匹とゾンビの影が地面から沸いてきた。
 出来るだけ明るい場所に移動しなくては――。
 よほど明るくないとゾンビ達を防ぐ事は出来ないが、それでも少しでも明るい方がゾンビの数が少ないのだ。
 ゴミ集積所に置き去りにされた壊れたモップの柄を拾った未明は周りを見回し、遠くに一つだけついている街灯の下を目指した。
 そこには避難所が有る筈だ。
 公共の避難所は法律によって大抵の町には一定の距離を置いて設置されている。