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カナダの自然に魅せられて  ~リスを探して10日間~ (1)

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7、ホワイトロック伝説


私たちがひとまず落ち着いた時、遊歩道を歩きながら船長さんは「ホワイトロック伝説」を話してくれた。

どうしてこの穏やかな海岸線にドカーンと大きな岩がたった一つだけ立っているのか。
大人が両手を広げて繋いでも10人では足りないぐらい大きな岩を誰が運んできたのか。
重さは500トンぐらいもある花崗岩の岩だそうだ。
がけ崩れで近くの山から落ちてきた岩ではなく、このあたりの地層とは全く違った地質の岩なんだそうだ。
誰が何のために遠くから運んできたのか不思議に思った。

ホワイトロック伝説はこんなお話だった。


昔むかし、バンクーバー島の地下の洞窟に海の神様の王子が住んでいたそうな。
その息子は背が高くて、ハンサムで、とても強かった。
また、セミアムー湾の海岸に住む部族の首長には美しい娘がいた。
たくさんの若者が言い寄ってきたが、娘は全部断っていたそうな。

ある日、その可愛い王女が水浴びしていたときに、王女のそばに現われた海の神の王子は、一目で恋に落ちてしまった。
そして、王女を連れて王子の父親のところに行ったが、
「神と人間の結婚は許さない。」
とひどく怒られたそうだ。
しかたなく、今度は王女の部族の村にやってきて、王女の父親に結婚を報告したが、
「神と人間は結婚できない。」
とまたしても反対された。

行き場をなくした海の神の王子は、悲しくなって、湾の岸にあった巨大な白い岩をその力強い腕で投げ飛ばし、王女に言った。
「今投げた石の落ちたところに新しい家を作ろうよ。」
と。
巨大な石が落ちたところまでは60マイルもあったが、王子は王女を抱きかかえ海をもぐって渡ってきたという。
三日月のような湾で、二人は新しい部族を作った。
そして、その湾にちなんで半月族と名づけ有名になったそうな。

この真っ白な巨大な岩はこのようにして昔からこの場所にあり、ホワイトロックと名づけられたそうだ。


でも、なぜ「白い岩」なんだろう?
その訳は、岩がビーチのすぐそばにあるため、貝を食べる鳥たちの糞で真っ白になったかららしい。
白くて大きい岩ということで目立っていたため、その昔は付近を通る船の水路標識にもなっていたという。
そして、なぜこの地にあるのかといえば、氷河期の最後に、北の方からどんぶらこと流れ着いたのが真相らしい。

氷河によって流されてきた…。

カナディアンロッキーにまだまだ残る氷河のことを思えば、カナダらしい自然現象だと納得。
この地とは全然違う地質というのも、遠いところから流されてきたのならそれもわかる。
また、鳥の糞で白いままにせず、ペンキを塗って「落書きスポット」にした発想は素晴らしい。
日本では考えられないことだ。
日本だと、この岩にしめ縄を巻いて神聖視し、賽銭箱を置いてるかも知れないな。

この岩が落書きでいっぱいになってくると、白いペンキを塗って落書きを消し、また白いキャンパスにするらしい。粋だなぁと思った。

「な~んや!ペンキを塗って『ホワイトロック』って言ってるのか…」
と最初見たときに思ったが、なんのなんの、こんな素敵な伝説と粋な町の計らいがあったのだとは知らなかった。

それに、遠目からも、この岩に子どもが登って楽しそうに遊んでいる様子が見て取れた。
高いところに登りたくなるのはどこの国でも同じなんだなあ。
それに、町の象徴的な岩だというのに、子どもがてっぺんまで登って遊んでもいいんだなんて…。

と思いながら、近くまで行くと、岩にはちゃんと木が立てかけてあって、ここからどうぞ登ってくださいとでも言ってる様だった。
何とおおらかな国なんだろうと感心した。