狐鋼色の思い出 真梨子編第3話更新
「こんなことしてよかったのかなお父さんお母さん」
私は人なのかな
私は機械なのかな
気づくと水溜りにへたれこんでいた
「人でもなく機械でもない 私は何?」
もうどうでもよくなる
どうせ又やつらは来るのだろう
こんな運命はいやだ
あたし……死んだほうがいいのかな
バシャ
大きな音がする
ふと後ろを振り返ると女の子がかさを落としてこちらを見ている
ああそうか見られたか
「あなたはいったい何者なの?」
「何が?」
あたしにわからないものを聞いてどうする
「だって……あなた……その……ニンゲンじゃ……無いよね?」
わからない
わからない
わからない
わかってたまるか
あたしの気持ちもわからないくせに
そのとき機械人形がまた再起動しようと動く
見るもののどうせ再起動は出来ない
ふとそのまま女の子を見る
「
イヌ科 キツネ目 ホッキョクギツネ
」
息を呑む
念のためにもう一度確認する
変わらない
私と同じような存在が居たんだ!
「それはあなたもでしょ」
気になって聞く
とたんに少女の顔が強張る
心拍数も人の域を脱している彼女をみて私は言う
「あなたからは人の鼓動を感じない」
体を震わせながら少女は私に言う
「あなた何言ってるの……」
私の体の右目が伝える
「
ウソヲツイテイル
」
「図星ね」
「……」
うれしかった
気持ちを共有できるかもしれない
手を握る
彼女のことが知りたい
「あなたは何者?」
「えっ」
彼女の右手が毛で覆われていく
「離してっ!」
彼女は手をいきなり振り払うと必死の形相でこちらを見てくる
「あなた……キツネ?」
「違うわ」
「キツネでしょ」
「違うったら!」
彼女は叫ぶ
こんなに動揺するなんて……
「あなたは本当に不思議な存在ね」
さらに興味がわく
この日本に私のような存在がいたことが奇跡だと思った
わかってくれる人なんかいないと思った
これから話したい
そうだ喫茶店でお茶でも飲みながらなんてどうかな
「これからお茶でもどお?」
手を差し出す
彼女はおびえた目でこっちを見て言い放った
「嫌……嫌……嫌っ!」
私の手をはらって彼女は駆け出していった
「まって!」
しかし声は届くはずもなかった
私はやっぱり怪物なのかなお父さん……お母さん……
しとしとと降る雨は当分止みそうに無かった
作品名:狐鋼色の思い出 真梨子編第3話更新 作家名:チャーリー&ティミー