狐鋼色の思い出 真梨子編第3話更新
「ふぁ〜」
眠い
眠い眠い
眠い眠い眠い
「音楽サボるのは毎回だけど眠いなぁ〜」
本でも読んで頭の中に入れなきゃ
「ふむふむ」
えーとダイオードをここに流用するとうまい具合に光るか……光ってどうする
ガラガラ
「ん」
ああ北野さんか
……北野さん!?
「あ……ええと……」
気まずい・・・・・・
ええい本を読め
本を読むのだあたし!
集中できないなぁ
アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この空気イヤだ
話しかけよう
気まずいのはいやだぁ
「…ねぇ北野さん」
恐る恐る声をかける
「ヒッ……」
気まずさがエスカレートするからやめてぇ
おびえないでぇ
「な、何」
ど、どうしよう
「今授業中よね。何してるの?」
あたしがいえたことかぁ
もうわけわからない!
「私は教科書を取りに来たの。あなたこそ何をやってるのよ?その様子じゃ教室移動すらしてないようね」
うっ
言われた
ああ痛いとこ突くなぁ
「あたしは音アレルギーなの。」
間違いじゃない
人間の耳には聞こえない音があたしには聞こえる
ピアノの音は二重になって聞こえとても耳障りでうるさいから嫌いなのだ
「はぁ?」
変な目であたしを見ないで!
仕方ないでしょ事実なんだから!
「あ……いや……その」
これ明らかにあたしのこと怖がってるわよね
えーーーと、とりあえず落ち着かせよう
話す話すんだ
「怖がらなくていいわ」↑
声が裏返った
緊張するなあたし!負けるなあたし!
でも結局ダメだった〜
だめだぁあああああああああ
本閉じよう
近づいて
きちんと話そう
「あなた確かこの前もあったよね」
我ながら選択をミスした
そこは改めて自己紹介だろ!
どうしよう
どう見たってこの目は怖がってる
「会って無いわ」
[嘘]
「嘘言わないで、私にはわかるのよ」
この性格どうにかしないとなぁ
何このツンデレ
ダメじゃん
「その包帯取ってみて」
なんかもう「怖い人」に位置づけられてるな
あたし
ミス!
ミス!
脳内画面がうるさい!
「いやこれはその……骨折で…」
[嘘]
こうなったら
もうどうにでもなれ
「骨折してないのは、肩を見ればわかるわ」
「あ…間違えた…これはちょと切っちゃて」
はいはい嘘乙
「傷を負っている行動パターンじゃない あなたは怪我なんてしていない」
……どっかの殺人ロボットか 私は
ターミネー○ーか?
「なら包帯を巻いている理由はただ1つ、その腕を誰にも見せたくないから」
「……」
ああ黙っちゃた
どうしよう
「ほら、はずしてよ」
見たい
好奇心に駆られる
ああこんなときにあたしなんて不謹慎ガール!
これ以上彼女を怖がらせてどうする!
とか思いつつ手を伸ばすあたし
ああダメだぁ
欲望に勝てない
真実が知りたい
「触らないで」
デスヨネー
そうだと思いましたよ
何が一番悔しかったかって期待した自分にだよ
ああダメだあたし
「いや……別にあなたのことが嫌いとかそういうのじゃなくて……その……」
ああこの間を乗り切るにはこの言葉しかない
でも最悪だ
「で?」
ああ言っちゃった
もう取り返しつかない
「あなたの手ってさ……私と相性悪いんだよね」
相性が悪い……
手を見る
「相性が悪い……」
よくよく考えるとおかしい
「あははははははは 金属はキツネと相性悪いの?」
あははははははははははははははんなわけあるか〜
「ねぇ……あのさ……私のこと……キツネキツネ言うのはやめてくれない?」
あ〜つまりばれたくないってこと
まぁそうだよね
「だってキツネなんでしょ?もう分かってるんだからいいじゃない?」
いじわるしてやる
「そうだけど……」
はっきりしなさい
「なんだか嫌なんだその呼びかたされるの。わたしはニンゲンとして……ううん、なんでもない」
そうか彼女はニンゲンとして生きたいのか
私と同じね……
「それはあたしと同じね」
つい言葉に出た
「あたしも……ニンゲンとして生きたい」
それを言うのにどれくらいの刻が過ぎたのかあたしにはわからなかった
あれ?
なんだ?
このデジャブは
・・・・・・・・
「この子が育つころにはもっと平和な世界であればいいわね あなた」
「ああ私のような怪物の子供だけどこの子にはニンゲンとして生きて欲しい」
「あなた」
「なんだい 希」
「そんなことは言わないで たしかにあなたの体はもうすでにすべて機械化しています」
「ああ」
「でもあなたは誰よりもニンゲンらしいですよ」
「ありがとう 希」
・・・・・・・・・
父さん?
母さん?
私は何も知らない
父さんと母さんは死んで私の体はニンゲンのそれではなかった
そのときから過去の記憶はほとんど覚えていない
でも……
ふと現実に目を向けた
誰かが来ていたようだ
走る音が聞こえた……
気分が悪かった
気持ち悪かった
外に出たかった
いろんな意味でこの場所には居たくなかった
「あたしこれから屋上に行くんだけどあなたも来ない?」
場所を移すべきだ
屋上に行けばいい
軽く軽蔑するような目でこっちを見てくる
何度も思うその気持ち
そんな目で見ないでぇ
「ごめん今授業あるし……」
そんなの知ってる
「1回くらい問題ないわよ」
毎回サボっている私の音楽の成績が5段階中の3なのだから1回くらい問題ないと思う
右手を差し出す
あれ?なんか渡し大切なこと忘れてるような……
「ご、ごめん」
謝らなきゃ
機械の右手じゃむりだよね
「今日は天気もいいから屋上にいれば気分晴れると思ったんだけどなぁ」
まぁ無理……か
当たり前……だよね
「それじゃ授業しっかりうけてね あたしは屋上にいるから」
そう言って去ろうとした
そのときだった
「待って……」
ん?
ふと振り返ると彼女は
「……私も行くよ。少しだけだけど……」
そっか
来てくれるのか
「ありがとう」
「ほら、空が綺麗でしょ」
太陽が私たちを照らす
鳥はさえずり、雲は流れていた
「もっともそれが理由じゃいけないよね」
つぶやく
「で何のよう?」
そうね
「改めてよろしく、井上真梨子よ。嫌いなものは幽霊と浴槽とそれから・・・・・・機械人形」
最後の一言が自分の心に重くのしかかる
なぜこんなことになったの?
「自己紹介?どういうこと?」
簡単に言うならばそう・・・・・・
「秘密を共有した私たちがもっと知り合えばその秘密は誰にも漏れずに済むし、何か困ったとき助け合うことができる。考え方が間違っているかしら?」
陽炎がゆらりゆらりとはためく
鳥たちはミミズを咥えて鳴いている
「結局人間でもなく機械にもなりきれない・・・・・・怪物よ・・・・・・あたしは」
エリは黙って話を聞く
「元々あたしのように体が半分もサイボーグはいないだろうけど・・・・・・似たような人ならたくさんいる・・・・・・筋電義手は今では簡単にできる技術のうちの一つ・・・・・・」
少し間をおく
風が吹く
その時エリが口を開いた
「そんな怪物なんて・・・・・・それに筋電義手って・・・・・・分からない分からない。」
「分からないのはあたし・・・・・・あなたの存在」
キツネがそんな簡単に人間の町で化けられるわけ無い
まず第一そんな非科学的なものは認めない
と言いたいがそれは難しい
作品名:狐鋼色の思い出 真梨子編第3話更新 作家名:チャーリー&ティミー