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見えない

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「今だ、馨!」
 そう、朽ちた部分の中心に、森主はいるのである。そしてそれなら、妖怪が見えない馨にだって手に取るように解るのだ。
 馨は走り出すと、梓が捨てたばかりの棒を拾う。たまたま視界に入った同じくらいの太さと長さを持つ棒を反対側の手に持ち、二刀流の体制に変わった。
 彼は右手に持つ棒を森主に振るう。しかし、ぶつかる前に朽ちて、当たったときにはぼろりとすぐに崩れ落ちた。樹の中にいたのであろう虫たちが、森主の気に当てられて絶命していく。小さな体では、この邪気には抵抗できないだろう。
 彼は右の棒をつかんで、空いたほうの手で馨を捕らえようとした。が、馨はすぐさま左の棒で防戦する。右の棒がつかまれた時点で、森主の動きの予測がつきやすくなった。
 攻撃道具を探していた梓が、近くに落ちていた空き缶を見つける。いつもなら環境破壊だと怒るところだが、今は感謝の気持ちすらあふれ出す。
「馨、どけ!」
「は?」
 驚いて梓のほうに目を向けると、その方面から空き缶が飛んできた。空き缶なら朽ちることはない。梓のその考えがわかったのか、自分で至ったのかは解らないが、馨は森主を捕らえなければと思った。このままでは避けられてしまうかもしれないからだ。とにかく、「その場を動かさずに、立ったままの状態」にすればいい。
 彼は森主の足元に、先ほど離した木を蹴飛ばした。森主の視線は思わずそちらへ向かう。とっさの判断が命取りになるときがある。森主のこのたった一回の行動のおかげで、空き缶があたる隙が生まれた。
 が、予想外のことが起きた。
作品名:見えない 作家名:神田 諷