見えない
ツキワとマモルがいたすぐ下で、爆発が起こった。
サトキの目の前で、二人の体が舞うのが見えた。
「ツキワッ、マモルッ!」
サトキは暴れたが、男がサトキを放すことはない。むしろ、サトキに暴れる猶予を与えて、反応を楽しんでいる悪質さも感じる。不意に男がささやいた。
「お前は俺に向かって戦いに来た褒美だ。殺さないでやる」
そういって、男は彼に呪いをかけた。あの、不在の呪いだ。背中の激痛と怒りで、サトキは周囲に暴風を起こした。男はその威力に目を丸くしたが、足を踏みとどめる。
「すげぇなぁ、おい!でもお前のその力、傷つけられるものじゃないだろ」
ニッと笑ったその男の腕に、一気に切り傷がついた。そこまでひどい痛みではなかったが、驚いた男は思わずサトキを落とす。解放された彼は、ごろごろと転がって木陰に隠れた。不意に、彼の周りに暖かな光が落ちる。再び背中に激痛が走り、しかしその激痛はすぐに止んだ。
サトキの逃げた方角を探していた男は、その光を見て感動した。
「死んだやつにそこまで力が残っているとはな」
そう。さきほどサトキを助けたのはツキワの力、今降りかかっている光の正体は、マモルの力だ。
しかし、いくら「癒し」のマモルの力を持ってしても、その呪いを解除することは出来なかった。だから彼は、弱めたのだ。
「・・・あの女の生まれ変わりには見えるように、か。面白いことを」
呪いをかけた本人である男は、解除された条件を知った。そしてそれをつぶやく。それを洩れ聞いたサトキは、捕まる前に走り出そうと立ち上がった。
焦るサトキとは裏腹に、男は悠然と名乗った。