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見えない

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「俺の兄弟が、唯一残してくれた希望だ」
 サトキはぎゅっと手を握る。泣きそうな顔でうつむく彼に、梓は顔をしかめた。背を向けている馨はその変化に気付けない。もちろん、サトキの顔も見えていない。ただ、サトキの暗い声は、彼の耳にもしっかり届いた。
「どういうことだ?」
 サトキの大雑把な説明に、馨が尋ねた。梓も同様らしく、サトキのほうを見つめる。彼は深呼吸をすると、天を仰ぐ。
「ずっと・・・、もう何年も昔の話だ」
 そのままサトキは、ゆっくりと彼の過去を語りだした。
作品名:見えない 作家名:神田 諷