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   ――  102  ――
 ぼくらの住んでいる神ヶ崎市は大きく四つの区画に区分できる。
 一つは、山野と私立神ヶ崎学院以外ほとんどなにもない区画。
 一つは、ショッピングモールなどの施設が集まった商業区画。
 一つは、古くから神ヶ崎に住まう人々の住居が多い旧都区画。
 一つは、商業区画の開発に伴って新たに整備された新都区画。
 ぼくのような神ヶ崎学院生徒――通称、神ヶ崎生は商業区と学院、友人宅と自分の家をうろうろするのが普通だ。
 ぼくは今、新都に自宅へと向かっているところだ。句冗の家も新都区なので、向かう方向は同じ。商業区に寄り、遊んでから帰ることも多いが、今日は直帰コースだ。
「不図、現実逃避はそれくらいにして、このちびっこの相手を手伝ってくれ」
「誰がちびですか。此方(こなた)を子供扱いするんじゃありません、このもっさり頭が」
「このもっさりが特徴なんだよ! これだからちびっこは」
「類人猿には人間の言葉が理解できないようですね。ちびっこじゃないと言っているでしょう」
「まぁまぁ、句冗はケンカ売らない。菫ちゃんも買わない」
 二人はそっぽを向き、拗ねてみせる。こんなところだけ気が合うものだから、手を焼いている。
「陵先輩がそういうのでしたら、此方は矛を収めましょう。此方は桐紙先輩のように野蛮ではありませんから」
 菫ちゃんこと、菫・ワイアーム(スミレ・--)は癖の強いブロンドを逆立て、名前と同じバイオレットの瞳で見下す。
「ほう、言ってくれるな。俺はお前のようにちいさくないからな。謝れば許してやるぞ?」
 句冗は男子でも背が高い方だ。それを誇示するかのように胸を張り、菫ちゃんの頭を撫でる。
 すぐさま飛ぶ反撃。ボディーブローだ。
 だが。
「〜〜ッ! なんで此方の方が痛いんですか」
「そこそこ鍛えてるからな。というか、すぐ手や足が出るのはどうかと思うぞ」
「さきに子供扱いしたのは貴方でしょう」
「あぁ、そうか。悪いな」
 言いながらも、顔をニヤけさせながら撫でるてを止めない。ちょっと涙目になっている菫ちゃん。
 句冗を止めに動いたが、その必要はなかった。
 ローキック。
 菫ちゃんの足が、句冗の脛に叩きつけられた。
「ぐおっ!?」
 句冗は奇声を上げ、その場で悶絶。あまりの痛みに、足を押さえて転げ回る。
「これなら効くようですね。次からはこれで行きましょう」
 先ほどまで半べそだったとは思えないほど、すっきりした表情をしている。そこまで痛めつけたかったのか。
「次はもうちょっと加減してあげてね。さすがに句冗も可哀相だから」
「加減じゃなくて、二度とやらせないでくれ……」
「だったら、二度と子供扱いしないで下さい。次にしたら罰として、タメ口にしますから。あ、桐紙先輩だけで陵先輩は別ですからね」
「まぁ、ぼくはタメ口でも敬語でもかまわないけどね」
 苦笑いで答えるぼく。
「桐紙先輩と陵先輩を同列にはできませんよ。此方をちびっこ扱いするのは桐紙先輩だけですし」
「お前がもっさり頭と呼ぶからだろう」
「いいえ、此方がそんな品のない貶し方を率先してするわけがありません。間違いなく貴方が先です」
「俺だって自分から人を莫迦にしたのは、片手で数えられる程度だ。間違いようもなくお前が先」
「ハイハイ、二人とも落ち着いて。まずは帰ろうよ。そこで言い合ってる間、足が全く動いてないんだけど、いつになったら帰れるのかな?」
 ぼくの指摘に二人は口を閉ざし、渋々歩き出す。二人の歩く後ろを、ぼくは追随する。
 なんだってこんなに仲が悪いんだろうね? なんて、殺夜がいれば言いそうだ。
 その後も二人は険悪なまま会話もなく、ちょっと後味の悪いまま、ぼくらは帰ったのだった。