ザ・ファイナリスト
<ザ・ファイナリスト>
その日は何故か目覚めが悪かった。
私は朝食をとらずに急いで都内の私鉄の駅へと走った。
ボロいアパートで一人暮しをしている私だが、たとえ簡単ではあっても毎日朝食はとるようにしているのだ。
休日の朝には同じ会社に勤める彼女が気の利いた朝食を用意してくれたりもする……。
どうやら遅刻にはならないぎりぎりの電車に間に合った私は、鞄から読みかけの経済雑誌を取り出し、折ってあったページを延ばして読み始めた。
異変は少し前から起きていたようだ。
しかし誌面に集中していた私が気付いたのは自分が降りる駅の数駅手前だった……。
停車した駅ではいつもの様な人の流れが無かった。
人々は階段や電車待ちの列に固まる事も無くあちらこちらで二人が向かい合って――。
じゃんけんをしていたのだ!?
私は何事かと思ったが、読みかけの記事以上に私の興味をそそることは無かった。
そして動き出した電車から小さくなって行く駅を見ると何かのイベントが終わったのか、流れの無い駅にごった返していた人々がまばらになっていた。
急行で途中駅をパスした電車が私の降りる駅に到着した。
そして私は異変の事実を身を以って知る事になったのである。
電車を下りるや否や、私は或る衝動にとり付かれた。
じゃんけんだ!
私は無性にじゃんけんがしたくなり、手近な見知らぬ男の肩を叩いた。
振り返った男は無言で頷き、大きく深呼吸をした。
掛け声は二人同時だった。
「じゃんけんぽん!」
「いんじゃんほっ!」
その日は何故か目覚めが悪かった。
私は朝食をとらずに急いで都内の私鉄の駅へと走った。
ボロいアパートで一人暮しをしている私だが、たとえ簡単ではあっても毎日朝食はとるようにしているのだ。
休日の朝には同じ会社に勤める彼女が気の利いた朝食を用意してくれたりもする……。
どうやら遅刻にはならないぎりぎりの電車に間に合った私は、鞄から読みかけの経済雑誌を取り出し、折ってあったページを延ばして読み始めた。
異変は少し前から起きていたようだ。
しかし誌面に集中していた私が気付いたのは自分が降りる駅の数駅手前だった……。
停車した駅ではいつもの様な人の流れが無かった。
人々は階段や電車待ちの列に固まる事も無くあちらこちらで二人が向かい合って――。
じゃんけんをしていたのだ!?
私は何事かと思ったが、読みかけの記事以上に私の興味をそそることは無かった。
そして動き出した電車から小さくなって行く駅を見ると何かのイベントが終わったのか、流れの無い駅にごった返していた人々がまばらになっていた。
急行で途中駅をパスした電車が私の降りる駅に到着した。
そして私は異変の事実を身を以って知る事になったのである。
電車を下りるや否や、私は或る衝動にとり付かれた。
じゃんけんだ!
私は無性にじゃんけんがしたくなり、手近な見知らぬ男の肩を叩いた。
振り返った男は無言で頷き、大きく深呼吸をした。
掛け声は二人同時だった。
「じゃんけんぽん!」
「いんじゃんほっ!」