キジン×ヘンジン×サツジン
トランプをもってロビーに行くと、優里さんはおらず、代わりと言ってはなんだが、空岸さんがいた。
「おや、優里さんは?」
そう僕が尋ねると優希さんが、
「あの子は絵を描くために、少し外を見てくるそうよ」
なるほど、それでいないのか。
僕は空岸さんの方を向き、
「空岸さんはどうしてこちらへ?」
「どうしたもこうしたも、暇になった上、もうすぐ夕食の時間だ。多少早めに来て、のんびりと待っていても別段問題ないだろう?」
「そうですね。では、夕食までの間、トランプでもやりませんか?」
「いや、遠慮しておこう。あまりトランプだとかそういう運の関係するゲームは好きでなくてな」
「そうですか。では残念ですが、優希さん、沙織ちゃんとやっていることにします」
そういって僕はトランプを箱から出し、軽くきりながら二人のところへ向かう。
そんなときだ。
その悲鳴が聞こえてきたのは。
女性の、甲高く劈(つんざ)くような絶叫。
「なんですか!?」
僕がそういい、
「今の……! 優里の悲鳴よ!」
優希さんがそう答えた。
「裏の方から聞こえたな。さっさと行くぞ」
空岸さんがそう言い、僕らは急いで裏へと向かった。
作品名:キジン×ヘンジン×サツジン 作家名:空言縁