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キジン×ヘンジン×サツジン

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「では、全員がこれで揃いました。ご主人様より伝言がございます。えー、どうやら予定していた休暇が取れなかったそうでして、出席できないと。ただ、皆様には楽しんでいただけるように、とのことでした」
 申し訳なさそうに、仕使さんがいった。
 それに対し、
「ご主人の詳しい予定など、ないのですか?」
 僕がそう訊くと、
「申し訳ございません。どうやらお世話役もパーティーに出席なさる方々と同じように指名されるようでして……。しかも、お世話に当たるのは私だけのようなのです」
「なるほど。それなら仕方ありませんね。……とりあえず、部屋を決めて、荷物を運んではどうでしょうか?」
「そうですね。そういたしましょう」
 仕使さんが場を仕切り始め、部屋が決まっていく。
 どうやらこの山荘、改め洋館は、上から見たときに口の字型になっているらしい。
 玄関がちょうど南を向いており、その前には吊橋。
 西側も南側と同じように崖になっているが、橋は渡されていない。
 この洋館には裏口があるそうで、そこから出ると、ちょうど洋館の裏、つまりは洋館の北側に出る。
 東側から北側にかけて、崖こそないものの、少し進めば遭難必至の樹海が生い茂っている。
 洋館の内側は中庭になっているが、長年放っておかれたため、人が踏み入れないほど雑草が伸びてしまっているそうだ。
 洋館は三階建てだが、三階があるのは玄関に面しているところだけ。
 しかも、三階自体が物置部屋と化しているので、実質は二階建てと変わらない。
 洋館を口の字の辺ごとに分けて考えると、南棟のみ三階、他の棟は二階ということだ。
 今僕らがいるロビーは東棟の一階にあり、キッチンは北棟の一階。
 西棟の一階は管理室のようなもので、雑多な物、何か小物の予備、鍵などは大体ここにおいてあるらしい。
 南棟一階は玄関と廊下しかない。
 二階はすべて客間になっていて、各棟に四部屋づつの全部で十六部屋。
 それぞれに部屋番号が振ってあり、南棟西側が01号室で、そこから反時計回りに番号が振られている。
 さて、部屋決めの話に戻そう。
 部屋決めの際は、幽霊の沙織ちゃんが、
「わ、わたしは幽霊なので、部屋なんてなくても大丈夫です」
 と、ムチャクチャな謙虚さを発揮してみたり、
「俺か? 俺はこの部屋が良い。……嘘だがな」
 と、疑衣さんが場をかき乱したりと、なかなかに時間がかかったが、結局、このようになった。

 南棟01号室:夢埜 愛
   02号室:宮小路 沙織
   03号室:十一月二十九日 晦日
   04号室:四方八 方
 東棟05号室:疑衣 凶
   06号室:空岸 志人
   07号室:
   08号室:通間 道征
 北棟09号室:大真賀 ネネ
   10号室:友紙 優希
   11号室:友紙 優里
   12号室:
 西棟13号室:薬師 医病
   14号室:
   15号室:
   16号室:

 仕使さんは西棟一階、管理室の横に使用人用の部屋があるので、そこで充分だそうだ。
 部屋割りが決まったため、鍵を取りに管理室に向かう。
 鍵を渡されるとき、仕使さんが、
「扉は非常に重厚で、鍵もしっかりとしています。鍵を紛失されると、中に入れないという事態になりかねませんのでご注意を。一応マスターキーが一本ありますが、大分古くなっておりますので、使えない可能性もあります」
 と、そんなことを言っていた。
 渡された鍵には、キーホルダーのような留め具でタグが付けられており、そこに03と手書きで書いてある。
 おそらく、仕使さんが気を利かせて買ってきてくれたものだろう。
 使用人も大変だ。

 自分の部屋に行き、荷物を片付ける。
 しかし、生活に必要な最低限の物とトランプくらいしかもってきていないため、片付ける必要がないことに気づく。
 ……困りました。やることがありません。こんなときは……!
 自分の部屋を出て、隣の隣、01号室の扉を開けた。
 ノックもせずに。
「ジャジャーン! 突撃、隣の持ち物チェック〜! ……ア、レ?」
 部屋の中には、ちょうど着替え途中の夢埜さんがいた。
 スカートを脱ぎ、上着を脱ぎ、これから別の上着を着ようとしている。
 そんな状況だった。
 ………………。
「キャアアアアアアアア!」
 物が投げつけられる。
 痛い。
 だが、読者サービスのためにもしっかりと見ようとする。
 そう、読者のために僕は夢埜さんの下着姿をこの目に焼き付けなければならないのだ。
 そんな風に思ったとき、旅行かばんが投げられた。
 投げられたかばんは、こんな山奥だと思っていなかったのか、なかなかの強度と重量を誇る、下にタイヤのついたアレだ。
 それが僕の顔面にクリーンヒットした。
 吹き飛び、廊下でゴミくずのように倒れる。
 バタン、と大きな音をたてて扉が閉まり、ご丁寧に鍵までかけられた。
 ……むむ、失敗してしまった上に、体のあちこちが痛い。
 そんなことを思いながら伏していると、扉が開いた。
 夢埜さんはかばんや物を回収すると、僕のことを完全に無視して扉を閉め、元のように鍵をかける。
 いや、元のようにではない。
 チェーンの音もしたので、チェーンロックまでしたのだろう。
 まったく、ツンデレなのか。
 ツンツンなのか。
 どーせツンデレですけどね。
 いろいろと反芻(はんすう)もとい反省をしながら廊下に倒れていると、
「あ、あのう、大丈夫、ですか……?」
 声のする方を向くと、沙織ちゃんが心配そうな表情でこちらをのぞきこんでいた。
 僕は体にバネが入っているかのように跳ね起き、
「大丈夫大丈夫。このくらい、何てことないよ」
 すると、沙織ちゃんは安堵した様子で、
「よかった。突然悲鳴が上がって大きな音がしたので、何があったのかと思いました」
「いやー、夢埜さんの部屋に遊びに行ったら、ちょうど着替えてるところで。物を散々ぶつけられました。ノックもせずに開けた僕が悪いんですけどね」
 頭をかきながらそう答える。
 すると沙織ちゃんは苦笑いして、
「それは散々でしたね。ところで、なぜ夢埜さんのところに?」
 軽く首をかしげる。
「あんまり物を持ってこなかったせいで、片付けるような物がなくて。暇になったから他の人の部屋にお邪魔しようと思ったんですよ。01号室からこう、順に回っていこうかなと」
 僕の答えに対し、控えめながらも喜びつつ、
「じゃあ、わたしもご一緒していいですか? わたし、普段ここに住んでいるので、片付ける物がそもそもないんです」
 と、訊かれた。
「なるほど、では、04号室の四方八さんのところから回っていきますか」
 言いながら僕が歩き出すと、沙織ちゃんは、はい、と返事をして隣を歩き始めた。
 すると、前から四方八さんがこちらに駆けてくる。
 あまりに慌てた様子なため、僕が、
「四方八さん、どうかしたんですか?」
 と尋ねると、
「どうしたも、こうしたもないでしょう。さっき悲鳴と大きな物音がしましたけど、何があったんですか?」
 焦った口調で問い詰められる。