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吾輩は猫のキューピッドなのにゃ

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「お兄さん!送って行くから乗りなよ」開けた助手席側のドアの奥から、しわがれた男の声が云った。
「汚れた猫と一緒でいいんですか?」
「早く乾かしてやらないと死んじまうよ」
「ありがとうございます」
「その代わり今度から、野菜果物はうちで買ってよ」
「どこの店ですか?」
「冗談。どこよ、家は?」
 私は住所を云った。
「乗車拒否されてるとこ見たんで、追っかけてきたんだ」
 私はもう一度礼を云った。家に着くとまた礼を云って別れた。
「元気に、大きくなってくれるといいね」
「はい。頑張ります」
 家に入れた子猫をドライヤーで乾かしたが、牛乳は少ししか飲まなかった。
 私は段ボールに子猫を入れ、その下に電気毛布を敷いた。
 翌朝、その中で子猫は死んでいた。

 時々、人に飼われていたらしい仔猫が、道路で鳴いていることがある。
 そういう猫を拾っては私は飼い猫にしてきた。
 遊びにくる猫も追い払ったりはしない。