吾輩は猫のキューピッドなのにゃ
二週間くらいで帰ってくる場合もある。ふた月経って戻ってくることもある。
そろそろ帰ってくるだろう。そう思っていて、永久に戻らなかったり。
車に轢かれて死んだ猫は、年に一度、或いは数年に一度見かける。だが、病死した猫を見たことがない。
ミーが死んだのは、小学校の遠足の日だった。早朝にミーは車に轢かれて死んだ。私は観光バスの中で泣いていた。
ミーは一緒に散歩する猫だった。小学校の場所は、家のすぐ近くだった。
ミーと一緒に校庭へ行き、バックネットの前に彼を座らせる。
「向こうで手をあげたら駆けてこい」
校庭の対角線上を、私は全力疾走する。ほぼ百メートルを走る。うさぎ小屋の前で立ち止まり、振り向いて手をあげる。その瞬間にミーは猛スピードで走ってくる。
毎晩一緒に寝た。朝まで布団から出なかった。
「お手」「おすわり」「おあずけ」云われた通りにする猫だった。
ミー程に、賢い猫に出会ったことは、その後、皆無だった。
ミーにそっくりな猫は家までついてきた。玄関を開けると中に入ってきた。
出て行くときはひと声鳴いた。
その翌日、二代目ミーはやってきた。ベランダで、可愛い声で鳴いた。
私は読書中だった。声で知った。ソファーに座ったままサッシを開けると、
もう一度鳴いてから、猫は部屋に入った。
作品名:吾輩は猫のキューピッドなのにゃ 作家名:マナーモード